江戸時代に築堤された宝ヶ池は岩倉盆地の南端部に位置し、周辺の森林は稜線の南側にある長い歴史を持つ松ヶ崎集落の里山として維持されてきた。五山の送り火の「妙法」を持つ集落として知られる。公園域は昭和17年に京都市防空緑地として都市計画決定された。昭和41年に隣接地に建設された国立京都国際会館は大谷幸夫氏の設計による里山景観との融和を目指した建築である。対象地域の景観は、新旧の景観が融和しており、魅力的である。
柴田 昌三 / 京都大学名誉教授、兵庫県立淡路景観園芸学校学長兼校長
ため池を中心とする里山・里地の景観と現代的な建築物の融和した景観が、遠望される比叡山も含めて一幅の絵画のような落ち着いた雰囲気を感じさせる。宝が池周辺には小さな谷地が複数あり、小湿地が散在する。また、優れた歴史的特徴として、平安時代から続く松ヶ崎集落が維持してきた五山の送り火「妙法」に代表される文化景観を有している。
宝が池は古くから里山として利用されてきたが、里山資源利用の衰退により地域の人々との関係性は失われ、その後の変遷を経て、現在の生態系は劣化しつつある。生態系回復のための働きかけが継続的に行われており、現在は地域住民と行政が連携した再生活動が注目される。
歴史ある生業に新たに加わった建築物の景観、その後の生態系の劣化を経た後、地域が一体となった再生活動によって形成されつつある景観は重要である。