南紀熊野ジオパークの中核に位置し、特異な奇岩群のランドスケープとして本州最南端串本町の重要な観光資源となっている。しかし推薦者が強調したいのは、ここが世界的にも稀有な津波研究の聖地である点である。貫入岩体の直線ラインから過去の大津波によりこぼれ落ちている岩の大きさに、きたるべき南海トラフへの意識を強めていただければと思う。
原 祐二 / 和歌山大学
他に類を見ない奇岩群である本資産は、南紀熊野ジオパークの中核エレメントとなっている。1500万年前の火成活動により泥岩層の間に貫入した流紋岩が、その後の差別侵食により、あたかも橋桁のごとく並んでいる様は、地形形成の内作用と外作用の絶妙なバランスを物語っている。また、大津波の痕跡を残し、世界的にも稀有な津波研究の聖地でもある。
弘法大師がおよそ1.5km沖合の紀伊大島に架橋しようとしたところ、天の邪鬼のニワトリの鳴きまねにより作業をあきらめ、橋桁の杭だけが残ったという伝説がその名称の由来といわれる。長年人々が畏敬の念を持って望んできた証左といえ、複雑な地質地形のモザイクとして存在する紀伊半島南部でも、特に長らく人が愛でてきたランドスケープといえる。