堤防と樹冠による囲繞性や,堤防の切目で川と遭遇する意外性が,この公園の特徴である。
村上 修一 / 滋賀県立大学
霞堤と呼ばれる2線堤に囲まれた平坦な園路を,木漏れ日の温もりとともに歩くと,河道側の堤防が姿を消し,そのまま河原へと至る。
所々が切れて不連続である堤防のことを霞堤という。急流河川においては後背地の氾濫水を速やかに河道へ戻す効果が,土木史の研究で指摘されている。
国土交通省が2020年に施策として打ち出した流域治水では,霞堤の保全が対策の一つに挙げられている。本公園は,旧来の霞堤を,地域住民,学校関係者,専門家を交えて,国土交通省が自然再生事業により公園として整備したものである。重信川左岸には,上流側の堤防と下流側の堤防とが200m程度の間隔をあけて並行し,両堤防の間には水路,池,園路,樹林,遊具広場,あずま屋,スラックライン場,駐車場が設えられている。
本来,連続堤防によって川は堤外地とされ,堤内地のまちと明確に分け隔てられている。しかし霞堤の場合,堤防の隙間をとおして川とまちとがつながることが期待される。川と密接な関わりのある営みを本公園では体感することができる。