23/8/31掲載

人が「伝える」ランドスケープ資産

no.4-7「水都大阪・水の回廊」

都心部をロの字に流れる水の回廊は、水都の特徴的な骨格をつくり、水だけでなく人びとや生き物のネットワークを支え、さらに大阪の過去と未来をつなぐ役割を果たしている。

武田重昭 / 大阪公立大学

ハレの天神祭も、ケの生活インフラも、大阪の暮らしはいつも水辺に支えられてきた。大阪の水の回廊とは、都心部をロの字につなぐ水系ネットワークである。このうち東横堀川は、豊臣秀吉が大坂城の惣構として築いた大阪で最も古い堀川である。また、町衆が私財を投じて開削した道頓堀川をはじめ、八百八橋と称された大阪の堀や橋のほとんどは「民」によって整備・維持されていた。しかし高度経済成長期には、道路交通の発展とともに大阪の堀川の多くが埋め立てられた。残された水の回廊でも、高速道路で上空が塞がれ、カミソリ堤防による街との分断などによって水辺が都市の顔ではなくなっていった。
近年では、かつての水都としての姿を再生させようとする動きもある。2001年に『水の都大阪再生構想』が内閣府の都市再生プロジェクトに採択され、現在に至るまで水辺を活用した様々な事業が進められてきている。

このように大阪の魅力は水辺とともに育まれてきた。これからもそこに生きる人々の暮らしそのものがまちの価値を更新していくことが期待される。

水都大阪コンソーシアム(2023):水都大阪の教科書~誰かにはなしたくなる もっと知りたくなる~
泉英明・嘉名光市・武田重昭(2015):都市を変える水辺アクション・実践ガイド:学芸出版社
武田重昭(2019):水都大阪のクライマクス―公民連携の到達点とその先に向けて:建築雑誌134(1729),14-15