古くからの神社と鎮守の森が園内にあるといったこの植物園は、国内では珍しく、歴史的な空間も上手く融合させている園である。また、温室を始め、区画ごとに植物を分かりやすく植えられており、植生を学び易くした空間に設計がされている。日本で最初の公立植物園という事からも価値が高いといえよう。
福井 亘 / 京都府立大学
賀茂川左岸に位置し、園内には上賀茂神社境外末社の半木(なからぎ)神社と鎮守の森が残っている。この鎮守の森は、「半木の森」と言われる自然林で、山城盆地の植生を今に伝えている。かつての地形を活用していることから、歴史的な空間性にも特徴を持っている。1924年(大正13年)に日本で最初に開設された公立植物園で、「大典記念京都植物園」として当初開園した。戦後、占領軍による京都御苑の代替地として、本植物園が12年間接収され、多くの樹木が伐採されてしまったものの、接収返還後は徐々に樹種を増やし、「生きた植物の博物館」として現在は機能をしている。
植物園の機能としてだけではなく、大正から現在に至る歴史的な経緯を踏まえて、その価値が高い。また、植物園に隣接して資料館や大学といった施設が存在することで、京都洛北における文化や科学研究の場を担っており、社会的にも意義が高い環境の一端を担っている。日本最大級の温室に加え、24ha、約12,000種類、約12万本にも及ぶ植物があり、生体としても国内でも有数の保有数を持つ植物園である。