道路や水路の先端79 ヶ所の堤防上の視点場から、最長で3kmを超える広大な軸線景観を、周囲の山並みとともに楽しむことが可能である。さらに、フランス式庭園で錯視効果をもたらすとされる土地の中折れ(勾配の変化)も認められる。
村上 修一 / 滋賀県立大学
1967年に造成された面積1145haの干拓地。周囲の堤防より低い平坦な土地に、圃場、排水路、道路、用水路が格子状のパターンを形成している。琵琶湖の沿岸には数多くの内湖(浜堤や砂州で湖と隔てられた水深1~2mの潟湖)がかつて存在したが、その8割以上が干拓により陸域化した。干拓で築かれた承水溝の堤防法面によって囲まれた広大な低地が、消失した最大の内湖の痕跡をとどめている。農地に対する社会的要請が干拓地造成当時から変わり、畑地や畜産施設用地が水田の中に混在するようになり、非農用地への転用も認められるなど、土地利用の変化が進んでいる。
道路や水路という直線状の要素が景観の軸線を成し、軸線の両側に圃場が並ぶ、という特徴的な景観が、堤防上より眺望される、という観賞価値が認められる。その価値は社会的にほとんど認知されておらず、今後の土地利用の変化によって失われる可能性がある。