21/10/20掲載

実務家が見出すランドスケープ資産

no.4「八尾市内 玉串川沿いの桜並木」

大和川から北に分岐する、世界かんがい遺産の玉串川。周辺には閑静な住宅街、学校や幼稚園が数多く立地している。その玉串川沿い、河内山本駅を中心に南北5㎞にわたり、ソメイヨシノの並木が続く。昭和40年頃に周辺の住民の方が協力して植えられたものだという。50年以上を経た現在では立派に成長し、春には、川を覆う花のトンネルとなり、水面には花びらが流れ、夜は提灯でライトアップもされ、豊かな春の季節を演出している。老齢となり弱ってきている個体も見受けられ、また根による石積護岸の損傷もあり、八尾の名所の一つとして定着した桜並木を健全に存続させたいと、護岸改修と桜の再植栽が進行中である。

このあたりは生駒山系の山裾に位置し、少し足を伸ばせば、四季折々に表情を変える自然豊かな山の景観も望める地域でもあるが、この玉串川の桜並木は、生活に寄り添った植栽として、桜の美しさだけでなく地域住民の愛情を感じさせてくれ、まったく別の趣がある。自分たちの住む町を美しく、又愛着の持てるものとするため住民主体で植栽したこと、その後も住民に愛され続け存続のために官民一体となり努力されていることは、特筆すべきこの並木の特徴であろう。

當内 匡 / 株式会社庭樹園