古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(古都保存法)や国営公園整備等により、幅広い関係者の思いと共に半世紀の長きにわたり維持保全されてきた明日香村の歴史的風土が生み出す風景は、私たちの心に直接働きかける力を持っている。風土保存の一翼を担い整備された国営飛鳥歴史公園甘樫地区内の甘樫丘展望台からは、この明日香村を前景に、大和三山中央の藤原京を経て平城京へと続く条理空間を望むことができ、人気の眺望風景となっている。
時間と空間の壮大な重なりを有し,同時に今に生きる生活空間でもあるこの風景は、ランドスケープアーキテクチュアーの視点から、将来に渡り見守り続けるべき財産である。
西辻 俊明 / 株式会社現代ランドスケープ