大阪府営浜寺公園は、明治6年(1873年)12月、万葉集などの和歌にも詠まれた景勝地「高師の浜」に開設された、古い歴史をもつ公園である。その前後を問わず訪れた幾度もの松林伐採の危機や後の海岸の埋立てなどで、かつてあった白砂青松や海水浴場の姿は失われている。しかし、姿を変えながらも景勝地としての特性を継承させようとする取組み(松の伐採中止や補植による景観の保全、埋立地での当時東洋一と言われた多種多様なプール群や交通遊園、ばら庭園といった特色ある施設の整備など)によって、今も松林に囲まれ、様々なレクリエーションが楽しめる、大阪府を代表する都市公園として親しまれている。
令和5年(2023年)の開設150周年に中央噴水が親水型へ再整備され、プール群の一つであった徒渉池の機能が織り込まれたと聞く。松林を背景に水辺で憩う人々の情景は、古の白砂青松のランドスケープが地域の個性として受け継がれたように感じる。このような、これまでも、そしてこれからも行われるだろう共有知の継承とも言える「未来に向けた伝播(馳せられた人々の共通する想い)」の中にも、当地のランドスケープの価値が見出されるように思う。
増山 和弘 / 一般財団法人 大阪府公園協会
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大阪府 臨海公園事務所 浜寺公園(2003):浜寺公園記「浜寺の歴史を語る白砂青松のものがたり」