手結港(内港)周辺には特徴的な地形が存在するため、様々な視点場から手結港(内港)の石積みの掘込港湾や手結港可動橋を望むことができる。また、可動橋が開閉する際には、遮断機が下り警報機が鳴る様子を見ることができ、可動橋の開閉による景観の変化に加えて、独特の空間体験をすることができる。以上のような、多様な景観や空間体験が新たなランドスケープとしての価値を生み出しており、様々な人々が訪れる場所となっている。
岡田 準人 / 大阪産業大学
高知県香南市夜須町に位置する手結港(内港)とその入り口に架かる手結港可動橋(高知県手結港臨港道路可動橋)は、周辺の豊かな自然環境や町並み景観と調和した魅力的な景観を有している。
手結港(内港)は、手結住吉県立自然公園内にある岩礁地帯の入り江を掘削して造られた掘込港湾であり、高知市から室戸市に至る土佐湾沿いの海岸に位置する。江戸初期に完成した日本最古の石積みの掘込港湾であり、部分的な改修が何度か行われてきたが、水域部は当時の原型を保っている箇所もある。古くから漁業や商業のために利用され、現在でも漁船の係留等に使われている。また、入り口に架かる跳開式の手結港可動橋は、平成14年に完成し、手結港(内港)の水上交通と道路交通の要として、地元の人々の生活にとって重要な役割を果たしている。可動橋が開閉する際には警報機が鳴り始めて遮断機が下がり、長さ32mの可動橋が約6分間かけて開閉を行う様子は、視覚的な景観の変化だけではなく、聴覚的にも興味深い空間体験ができる。
手結港(内港)は、日本最古の石積みの掘込港湾であり歴史的に価値が高く、港の入り口に架かる手結港可動橋は、港湾の景観として周辺環境と調和を保ちながら特徴的な風景を作り出している。これらの歴史的・近代的な景観が、新たなランドスケープとしての価値を生み出している。