二神島は、松山市の高浜や三津浜の港から少し離れた島で、藩政時代以前の古くからの歴史を有している。この島には、瀬戸内の漁港の景観が見られ、緩やかな時間が流れる場所でもある。島内にある建築物、建物と建物の間の路地に加え、石垣・石積の景観は、統一感が感じられる。そしてここには、長い時間の積み重ねによる歴史と文化、風土が感じられる生活景が作り出されている。また、愛媛県の天然記念物(城の山のイブキ自生地)に指定され、樹齢300年を超えると云われるビャクシンの自生地が港から見られ、ランドマークともなっており、港から見るビャクシンの小山のような景観は、港と一体的な感じで絵画のようでもあり、特徴ある風景といえる。
福井 亘 / 京都府立大学
二神島は、防予諸島に含まれる忽那諸島南西に位置する島である。この島は、瀬戸内の漁村の形態を残し、時間をかけて現代に至るまでその景観を残している。港には、明治期に築造され、今も使われている石積の波止がある。港に向かって道路が通り、その港を囲むように建物が集まり、集落として存在している。その道路の脇にある建物は、時間を経た物も多くみられ、建物と建物の間には生活のための路地があり、建築物と石垣・石積の美しい空間が見られる。なお、路地には、辻々に瓦造りの祠があり、生活のための路地の場を丁寧に管理していることが見てとれる。海辺から集落の後背部には山があり、その山の斜面の段々部には石を積み上げ、そういった所にも建物がある。
このように島といった場において土地をうまく活用した景観も含めて、瀬戸内海の島の漁村形態、古い建物、生活のための路地が今でも活用されている様は、港と集落の一体的な空間として固有価値が高い。瀬戸内の島々と同様に、現在では二神島の島民も減少し、長く繋いできた伝統行事の継承も難しくなってきている現状から、文化や空間を含めた生活景も変化していくことが、今後の二神島自体の景観へ大きく影響すると考えられよう。