仁淀川流域には上流域から中流域、下流域から河口域にかけて趣のある多様な景観が存在し、そこに住む人々の生活や文化、そして様々な地形や植生などの豊かな自然環境との関係性を見ることができる。
岡田 準人 / 大阪産業大学
仁淀川流域の趣のある多様な景観は、人々の生活や文化と周辺の豊かな自然環境が創出している。
仁淀川は愛媛県の石鎚山を源流とし、愛媛県3市町、高知県7市町村を流域とし、多くの支流と合流しながら太平洋に注ぐ一級河川である(幹川流路延長124km、流域面積1,560km²)。源流域の一部にブナ林が存在し、上流域の大部分をスギ・ヒノキ林が占める。中流域にはシイ・カシの萌芽林が存在し、水辺にはツルヨシ群落を始め、水辺林が存在する。下流域の水辺にはツルヨシ群落のほか、低木林や高木林が存在する。河川や周辺の森林などの豊かな自然環境には、多様な生物が生息している。伝統的な祭事として、上流域の仁淀川町では「秋葉祭り(土佐三大祭り)」や「池川神楽(土佐三大神楽)」、下流域のいの町では椙本神社で秋の大祭「おなばれ」が行われている。古くから集落間をつなぐ生活道として、「沈下橋」が存在する。仁淀川は、流域に水の恵み(土佐和紙の発展など)をもたらし、川舟などの交通路としても重要な役割を担ってきた。
上流域では、山地に囲まれた渓谷が大部分を占め、山岳と渓谷が雄大な眺望景観を形成し、安居渓谷や中津渓谷などの景勝地が存在する。中流域では、蛇行する河川が周辺の豊かな自然とともに美しい景観を形成しており、沈下橋(浅尾沈下橋など)や横倉山、大樽の滝などが存在する。下流域では、キャンプなどの多様なレジャーが楽しめる親水空間としての河川敷が存在する。河口域では、河畔林や干潟が広がり、雄大な景観を眺めることができる。