23/7/31掲載

実務家が見出すランドスケープ資産

no.18「円山公園」

都市公園であり、国指定名勝でもある円山公園は、明治19年に開園した京都市最古の公園である。明治時代の拡張工事に始まり、大正時代の改良工事を経て、昭和2年に音楽堂を建設し、現在の円山公園の基本となる姿ができあがった。北面に知恩院、西面に八坂神社、南面を東大谷祖廟や高台寺に囲まれ、江戸期以前から八坂の往来の要所として賑わい、東面に広がる東山の豊かな自然は、八坂神社の社叢林へと繋がり、自然と歴史・文化に触れることができる場として、多くの来園者が訪れる。昭和24年に移植された二代目祇園枝垂桜は、本市の花見の名所を代表する桜として親しまれている。また、円山公園の質を高めることを目的として、平成29年~令和3年にかけて、流れや広場等を対象に修復工事が行われ、一層賑わいを見せている。

大正時代の円山公園の改良工事は、植治(7代目小川治兵衛)の関与が指摘されている。自然の風景を1:1のスケール感で表現した作風は、ひょうたん池から東山山麓までの景観に見て取れる。用と景の絶妙なバランスで設えられた造園空間は、100年以上経過してもなお、快適なパブリックスペースとして来園者を惹きつける。一方で、時間の経過とともに成長した樹木は、景観を変容させ、空間の連続性に影響を与えている。これは造園空間の特質であり、課題でもあるため、植治の設計思想を具現化(復元)するためのランドスケープの思想と技術力は、課題の改善のために不可欠である。今後、ランドスケープの思想と技術力を注いで修復された円山公園を通じて、ランドスケープの意義を社会に伝えるきっかけにしたいと思う。

近藤 正人 / 京都市役所