近年、「天空の城」として有名になった竹田城。10数年前には知る人ぞ知る山城であった。円山川の左岸、標高約353mの古城山の山頂部に築かれ、厳しい地形を巧みに利用して階段状に石垣を巡らせた縄張りは、虎が臥せているように見えることから「虎臥城(とらふすじょう)」とも呼ばれている(※名称の由来については諸説ある)。最高所に配した本丸の天守台を中心に、南方向、北方向、西方向へ曲輪が配され、特に各々の端部に位置する南千畳、北千畳、花屋敷は、広大な面積を持ち、芝生に覆われたその広がりのある風景はまさに「日本のマチュピチュ」と思わせる。城下を臨むと、円山川渓谷とその周囲に広がる田園風景の素晴らしい眺めを愛でることができる。
天空の城として雲海に浮かびあがる姿が有名になり、来訪者が急増し遺構の損壊など景観が崩れかけているが、後世に良好な状態で残す必要のある景観だと思う。安全という名目のもと景観を壊す舗装や柵の設置と、常識の無い来訪者への対応をどこまでする必要があるのか、熟慮が求められる対象である。
注:写真の景観は2012年頃撮影。その後有名になり、大勢の観光客が山道を踏み固めた結果、草が生えなくなり表面の土砂が洗堀、地中から瓦片などが露出し、雨水で流された土が泥水となって石垣の隙間に入り、石垣がせり出すなど損傷が露呈した。また坂道にはくぼみが生じ、転落事故も発生したことから、木杭のロープ柵設置によるルート制限、観光ルートに洗堀対策の防草シート敷設等の各種対策を講じることとなり、現在に至る。
坪倉 淳 / キタイ設計株式会社
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朝来市(2016)史跡竹田城跡保存活用計画