21/12/22掲載

実務家が見出すランドスケープ資産

no.5「北野天満宮 史跡「御土居」の景観」

北野天満宮史跡「御土居」は、豊臣秀吉により築造された土塁で、現存する御土居のなかでも規模が大きく、往時の土塁形状を伝える数少ない場所である。その土塁は、隣接する紙屋川の河岸段丘を活用し、その上部に人工盛土を行ったもので、河岸段丘面を含めた高低差約8.5mの土塁が延長260mに渡り連続している。歴史書によれば、当時の御土居は城郭の防御機能をもちつつ建築用材として活用できるタケが植栽されていたとされるが、ここはモミジ等の植生に変化し、京都らしい美しい錦秋が体感できる有数の場所として史跡の価値を高めている。

史跡御土居は、その殆どが開発により消失し京都市内9箇所が史跡に指定され断続的に保全されているに過ぎず、かつての秀吉の大事業というイメージはなかなか伝わってこない。ここは、河川と神社境内地が隣接する立地条件がプラスに働き、現代社会に上手く活用された文化財として継承すべきランドスケープと言えよう。

片木 孝子 / スタジオテロワール

宗教法人北野天満宮(2018)北野天満宮御土居保存整備事業報告書