22/2/25掲載

実務家が見出すランドスケープ資産

no.7「千里ニュータウンの三色彩道」

吹田市千里ニュータウンの北部に位置する藤白台地区にあり、阪急千里線北千里駅から東へ大阪大学方向に延びる長さ460mの通り。街路樹はタイワンフウ、アメリカフウ、トウカエデが混在し、季節毎に春の新緑、初秋の黄色、初冬の深紅に木々が染まることから、公募により「三色彩道」と名付けられた。1964年からの藤白台地区入居に先立ち植栽され、約60年を経て高さ14mを超す160本余の見事な並木景観を形成。広い歩道と無電柱という道路空間に恵まれた。吹田市は原則無剪定を貫き、落葉期には月2回の清掃を行うなど樹形維持のため奮闘している。160余本の落葉樹が季節毎の彩りで創り出す風景は、街に溶け込み、行き交う人々を和ませ、特に秋の紅葉は圧巻で見る人を魅了してやまない。

60年余を経過した千里NTは、一時オールドタウン化した後、2000年代初期から集合住宅の建替更新等の再生が進み、子育て年代層の増加に伴い、この道は幼稚園児を始め学生、通勤者が行き交い、良好な住環境を醸し出す趣あるコミュニテイ道路となった。この並木には、その年輪に60年間の千里の変遷が刻まれているという感慨がある。街路樹の佇まいが町の風格と資産価値を高める好例であり、彩と風格を備えたランドスケープをこれからも提供し続ける地区の資産である。

森下 元之 / 阪神造園建設業協同組合

取材協力・写真提供:吹田市土木部道路室