22/9/30掲載

実務家が見出すランドスケープ資産

no.9「神戸旧居留地」

神戸市街地の中心部近くに、独特のおもむきをたたえた空間が広がっている。神戸港の開港とともに建設された旧外国人居留地としての歴史を持つ場所で、イギリス人土木技師J.W.Hartが西欧の近代都市計画思想・技術に基づき設計を行い、整然とした規則的な町割りが基盤となっている。外国人居留地という歴史的価値に加え、現存する明治から昭和初期の西洋館と近代の建築物が共存しながらつくるエキゾチックな街並み。豊かな緑と草花で彩られた街路。神戸の中でも特にこころ踊る空間である。

外資系店舗も多く、商業エリアとしての役割もはたしている。歩道の拡幅と休息スペースの設置、車道の景観舗装など、より洗練された空間として造り込まれている。観光名所として、そして地元住民も利用できる非日常的な場所として西側の旧雑居地の南京町とともに今後も歴史的建造物の維持と景観との機能的な一体化が求められる。

山崎 由記美 / ㈱環境緑地設計研究所