22/2/26掲載

人が「居る」ランドスケープ資産

no.1-4「淀川河川公園」

河口に近い淀川右岸は、水面の向こうに開発が進む梅田周辺のスカイラインを望む絶好の視点場となっている。また、淀川大堰の閘門や十三地区の船着場の設置をはじめ、官民連携での公園利活用の社会実験が重ねられるなど、水都大阪の新しい魅力が生まれるポテンシャルを感じられる。

武田 重昭 / 大阪府立大学

昭和48年に供用開始された面積約240haの国営公園。河口部(大阪府)から桂川、宇治川、木津川が合流する三川合流部(京都府)までの延長約37kmの両岸の河川敷を有する。
明治期に粗朶を用いた水制工が全川に設置され、水深が確保されるとともに、土砂が堆積してワンド群が生じることで生き物の生息・生育環境が形成された。河岸沿いに広がる広大なヨシ原などの湿地性植物と相まって、河川特有の多様な生態系が形成されるとともに、淀川の特徴的な風景が形づくられた。戦後になり、河川断面積を大きくする工事が行われ、ワンド群の消失をはじめとして水域と陸域が分断されるなど、環境が大きく改変された。開園当初は、国民の体力づくりの機運の高まりや都市の過密化による土地不足の深刻化を背景として、グラウンド等の施設整備が優先的になされてきたが、近年では環境保全に対する意識の高まりや特徴ある水辺景観の保全・活用など多様なニーズへの対応が求められており、大都市圏に存在する連続したオープンスペースとしての淀川ならではの魅力向上が目指されている。

干潟やヨシ原、ワンドをはじめとする水陸移行帯は生物の生息・生育環境として重要である。また、背景の山なみと一体となった雄大な景観を形成するとともに淀川越しに都心部のパノラマ景観を眺望することができる。これらの自然環境や景観的価値に加えて、歴史・文化資源を活かした新しい河川空間の利用のあり方が模索されている。

国土交通省近畿地方整備局(2008):淀川河川公園基本計画
公益財団法人河川財団(2015):淀川河川公園管理事業の記録
淀川河川公園連絡協議会(1990):Yodo River Park 淀川河川公園