23/1/31掲載

実務家が見出すランドスケープ資産

no.16「虫生の森 森林再生を都市再生へ」

虫生の森は、川西市の中央部、猪名川と虫生川の合流部の西側に位置する。1965年(昭和40年)代に始まった大規模なニュータウン開発により残された斜面緑地の一つで、長年放置され荒廃化した森に2011年から環境保全運動がはじまり、森が生きかえり生物がどんどん再生し始めた。コナラ群落とシロバナウンゼンツツジの群生は川西市の天然記念物に指定され、エドヒガンやスズムシバナ、ササユリなどの植物をはじめ、モリアオガエルやヒキガエルなどの絶滅危惧種の生息も確認された。2015年以降は作業道の整備を通して、せせらぎを聞きながら滝や草木を眺められる環境づくりをおこなっている。

現在の虫生の森は、かつての暗い森から明るく身近かな森になり、自然体験や環境学習においても恰好のフィールドとなっている。「虫生川周辺の自然を守る会」による月4回程度の森林管理活動、毎月1回行われる観察会や体験会などが、森林の価値を飛躍的に向上させた。団地周辺の斜面地の多くは、川西市保有の都市緑地として全体で130haにも及ぶ。大規模ニュータウンの再生が課題となっている現在、この資源を最大限に活かすことが都市再生の一助になることを期待したい。

濱口 和雄 / (株)総合計画機構