22/10/31掲載

実務家が見出すランドスケープ資産

no.12 「国営明石海峡公園淡路地区 緑の喪失と創出の景」

国営明石海峡公園淡路地区は、淡路島北東部に位置する都市公園である。2002年に第一期開園し20年を経過した。海と花みどりの景観が美しい観光地として年間約50万人が訪れている。この地はかつて、ウバメガシやヤマモモが群生する「灘山」という標高約160mの山地だった。1963年より関西国際空港など大阪ベイエリアの埋立てに約1億㎥もの土砂採取が行われ、岩盤が露出する草すら生えない土取場跡地となった。1993年、兵庫県と国が連携して緑を回復し、国際交流拠点を創出する公園・緑化事業に着手。2000年には「人と自然のコミュニケーション」をテーマとする国際園芸・造園博ジャパンフローラ2000(淡路花博)が開催された。

20年以上を経た今、岩盤上の人工土壌に植えられた苗木は大きく成長し、土取場跡地の名残は感じられなくなった。来園者の多くは「緑の喪失と創出の景」であることに気づかないが、それで良いのだろう。私たちは自然とコミュニケーションできているか、明示的に提起するのではなく、美しい景に静かな問いを織り込み、訪れた人々に豊かな時間を提供する場であることが、この公園の本分であり魅力なのだと思う。

柳原 季明 / 国土交通省 国営明石海峡公園事務所