22/6/28掲載

人が「居る」ランドスケープ資産

no.1-6「和歌山城公園動物園」

史跡和歌山城内にあることから移転を検討されることもあるが、どっこい100年続いてきたお城の動物園。整備開始から100周年の際には多くの来園者に祝われた愛すべき存在。城の石垣や天守を臨みながら動物たちと近距離でふれあうことができ、ヤギなどとの散歩や餌やりなどの体験も充実しているハイコストパフォーマンスな動物園である。ぜひ個人でも、御家族でも、和歌山城に来た際には動物園に寄っていただければ幸いである。

後藤 千晴・原 祐二 / 和歌山大学

国内に上野動物園、京都市動物園、天王寺動物園の3園しか動物園がなかった1915年、和歌山公園(現・和歌山城公園)の改良計画のなかで計画された和歌山城内にある動物園。城内の石垣の桝形をそのまま残し、南の丸の郭のほぼ全体を用いて作られている。国の指定史跡内に残る非常に珍しい立地の動物園である。1970年に哺乳類中心の「童話園」と水鳥中心の「水禽園」という現在の姿にリニューアルし、今日まで多くの家族連れや小学校、幼稚園の遠足、ボランティアガイドの活動等でにぎわいを見せている。中心市街地でありながら、城郭敷地として保全される豊富な自然に囲まれ、まちなかでは見ることのできない鳥類の鳴き声や、野生動物、家畜類のにおいを感じることができる。
日本の近代化、城郭の公園化のなかで誕生した「和歌山公園動物園」(当時)。国内に動物園が3園しかなかった時代に計画されたのは画期的であり、100年もの間城郭との調和を図りながら運営されてきた、地域との関りも大変深い地元にとってなくてはならないもの。大正期、昭和期のリニューアルを経て、現在も入園無料で運営されており、規模は小さいながらも、多世代にわたって愛されている「お城の動物園」である。

後藤 千晴(2013):社会教育施設としての動物園と市民的運営:和歌山大学地域連携・生涯学習センター紀要・年報12.73-77( http://dx.doi.org/10.19002/AA12643047.12.73 )